中頭郡嘉手納町にある『新町通り』。狭すぎず広すぎないちょうどいい道幅の通りは、古くからあるお店と新しいお店が立ち並ぶ商店街です。子どもたち、年配の人、お店を営む人や車が行き交うこの通りに2019年にオープンしたタコス専門店『LUKE TACOS』の村吉勇也さんは、この地域のコトを『#ちょうどいい嘉手納』というハッシュタグで発信しています。そんな村吉さんに『新町通り』やこの地域との関わりなどについてお話を伺いました。
― 簡単なプロフィールを教えて下さい。
出身は恩納村です。洋服が好きで20歳の時に幼馴染の友人がいる広島へ行き、コレクションブランドを扱うセレクトショップで販売員をしていました。そのお店で店長まで務めた後、一時期 東京にいて、その後 27歳の時にアパレルブランドの立ち上げを視野に、沖縄に帰ってきました。
帰ってきて感じたのが、沖縄ってやっぱり暑いじゃないですか？なんかアパレルって感じじゃないなーと思って（笑）。一方で、2013年の東日本大震災の後に短期で帰ってきていた時に働いていた恩納村にある居酒屋の料理人さんの料理に対する姿勢などに共感して「料理人も楽しそうだなぁ」と思っていたのですが、たまたまその居酒屋がタコス屋も経営していて、タコスも好きだったし、アパレルでの店長経験を買われて共同経営者として店を任せてもらいました。その後、お店は共同経営者に譲り、自分で名付けた店名『LUKE TACOS』は貰う形で、嘉手納に移ってきたのですが、いい物件が見つからず、物件を探しつつピザ屋で働いて生地の配合を勉強してましたね。
遠くまで行かなくてもこのまちで完結してる、生きてるまちだなーと。
― なぜこの嘉手納『新町通り』にお店を出そうと思ったのでしょうか？
散歩が好きで、子どもと一緒に嘉手納を歩いてると、なんかいろいろ揃ってるなーと。居酒屋もあれば洋服のお直し屋さんとか、刺身を扱う店もあるし、いろんなお店がある。嘉手納って一つに集中してるなー、遠くまで行かなくてもこの街で完結してる、生きてるまちだなーと感じて。
でもなかなか物件が無くて、3年近く、休みの度に物件探しでぐるぐる歩いてました。この店は元々ハンバーガー屋さんだったんですけど、移転する、とある日突然不動産屋さんから連絡が来て、速攻で決めました。
恩納村のタコス屋で自分が名付けた店名『LUKE TACOS』をそのまま店名として2019年4月にオープンしました。子どもの頃から両親に「挨拶だけはちゃんとしなさい」と言われて育ったので、物件さがしや散歩で歩きながらいろんな人に挨拶してたんです。おかげで、いざお店をやるとなった時に、「あーあの時の！」と言われて、すぐに馴染むことができました。挨拶って、やっぱり大事ですね、コミュニケーションになるというか。 もちろん今でも、店の前を通る近所の人、車に乗ってる人とも、挨拶してますよ。
― 新町通りはどんなまちですか？
子どもから年配の方まで、いろんな人が毎日通りますね。通学路でもあるので、子ども達がうちの店にお水を飲みにきたり、店の外のベンチで一休みするおばーがいたり。
時間帯によって店で流す音楽を変えるんですが、夕方4時頃から沖縄民謡を流すんです。そうすると入りやすくなるのか、おばーが買いにきてくれるし、逆にレコードをプレゼントしてくれたり（笑）。夜は居酒屋帰りのおじさんたちも来てくれます。
通りのイベントも盛んで、エイサーや子どもたちの琉舞を披露したり、カラオケ大会もあるし、ハロウィンやクリスマスで飾りつけしたり、嘉手納外に知られていないイベントも多いんですよ。
お店を始めて、この通りがもっと好きになりましたね。
― 嘉手納、新町通りの良さってどんなところですか？
僕みたいな外から入って来た者や若い人に対してウェルカムだし、めっちゃ優しいです。音楽も好きでパーティーも好きなので、一応 周辺に気を使いながらやるんですけど、「若者はもっとやりなさい」と周りのお店の方達が言ってくれて。この地域の人全体が、子どもや若者に対して包んでくれるというか、優しいんですよね。でも優しいだけじゃなくて、子どもが悪いことしたらちゃんと怒れる。そういうところもあるんです。昔はコザみたいに賑やかだったらしく、地域間のコミュニケーションが元々根づいていたということもあるのかなぁ。
お店を始めて、この通りがもっと好きになりましたね。
役場の方たちもフランクにちゃんと見てくれてるし理解してくれてるというか、役場では出来ない 集客できない層を僕ら若者の店が集めてると認識していて、イベントなども声がけしてくれるんです。友人の亀島（珈琲喫茶カメシマ店主）達と、いろいろ企画もしてたんですがコロナで延期になってしまいましたが、そういう僕らにしか出来ない手伝い方を模索しながら盛り上げていければと思ってます。
※ aha! で以前取材させていただいた『珈琲喫茶カメシマ』さんが偶然、取材時にお店に休憩に来られていました！
珈琲喫茶カメシマ
町としても、町の永続をちゃんと考えてるなぁと思っていて。役場の方が中心となって、周辺企業と連携しながら、町独自の地域システムというか、例えばお店のお弁当を年配の人がネット注文してタクシーで配達する、みたいな「町全体で完結」するような、そんな取組みも始動していたり。
これまで地域が僕らの遊び方や行動をちゃんと受け入れてくれてきたからこそ、僕らもそういう活動に協力しようって思えるんでしょうね。嘉手納の人が好きになることをすれば、外の人に対しても「いいまちだよ」て言えるようになるでしょうし。ほんと、嘉手納はみんなが協力的なんですよ。
今コロナ禍の中でも、地元の人が買いに来てくれてますし、みんな心配してくれるんです。みんなで協力して頑張ろう、という想いがやっぱり強いんです。
まちの人が出来ないこと、まちに足りないコト、を僕らがしていきたい。
― 『#ちょうどいい嘉手納』について、どんな想いで発信していますか？
嘉手納を広めたい、SNSでハッシュタグつけて発信する時代だから、なんかいい言葉ないかなーと考えていて、ひらめいたんです。まち自体はいろんなお店があるし、田舎すぎず、都会すぎず、なんか『ちょうどいい』なーと。もしかして嘉手納を愛してなかったら怒られるような表現かもしれないけど、嘉手納を愛してるからこそ言えるんじゃないかなー。でも、もし怒られても、これだけ愛してる、と返す自信があります（笑）
SNSからの発信も含めて、僕らにしか出来ないコトをしていきたいですね。 昔ながらのまちと新しいカルチャーの融合、みたいな。今いろいろと企画をしています。
― 将来的にこのまちはどうあってほしいと思いますか？またそこに、どのような形で関わっていきたいと思いますか？
今のまんま、人が増えても やさしいまちであってほしいですね。それと信頼関係があるまち。小学生たちに挨拶をすると、返してくれる子が多いんです。それって親の影響というか、ひとつひとつの家庭がちゃんとしてる いい家庭だからだと思うんです。それに信頼関係があって「何かあったら子どもたちを怒ってくださいね」と言ってくれたりするんです。怒るのもやさしさですよね。もちろん子どもたちにも「怒っていいって言われてるからねー」って言ってます（笑）
そして、まちの人が出来ないコト、足りないコトを考えて、僕らがしていけば、活性化していくと思うんです。
【お店情報】
LUKE TACOS
中頭郡嘉手納町嘉手納445-12
Open 11:30-22:00
Tel 098-989-0996
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（※2020年8月時点の情報です）