「市場の古本屋ウララ」宇田智子さん / 那覇市牧志 市場本通り

「市場の古本屋ウララ」宇田智子さん / 那覇市牧志 市場本通り|このまちで生きる人 インタビュー このまちで生きる人。

国際通りから市場本通りを抜けると、建て替え工事が進む第一牧志公設市場に行き当たります。そのすぐ脇に『日本一狭い古本屋さん』と言われる『市場の古本屋ウララ』があります。営むのは、ジュンク堂に勤めたあと、2011年に独立した宇田智子さん。宇田さんに、公設市場周辺やご自身が活動するまちについて伺います。

「市場の古本屋ウララ」宇田智子さん / 那覇市牧志 市場本通り|このまちで生きる人 インタビュー
「市場の古本屋ウララ」宇田智子さん

― 簡単なプロフィールと子ども時代のことを教えてください。

 1980年、神奈川県川崎市に約10年、川崎のあと横浜に約10年、その後は沖縄に来るまで東京でひとり暮らしをしていました。小さい頃から児童文学を中心とした本が大好きで、図書館が遊び場でした。元々友達がそんなに多いタイプではなく、自分の心の中に『理想の友達』を作って、一緒に帰るということをやっているような子どもでした。

― 本のお仕事を始めたきっかけはなんですか?

大学1年のときに、住んでいた隣の駅の本屋で働いたのが最初でした。小さな店だったのですが、知らない本との出会いがあったりして、すごく楽しかったです。でも、社員の人たちは毎日忙しそうにしていて、当時は書店社員にはなるまいと思っていたんです。

大学4年の就職活動のとき、どんな業界が向いているのだろうと色々と調べていたんですが、自分の想像できる範囲じゃないと無理だなという結論に至り、やっぱり『本の世界』だなと。

出版社も考えたのですが、世の中にはたくさん本があるから、これ以上必要じゃないなと。また、取次もお客さんとの距離が有りすぎたので、あまり仕事のイメージが出来なかった。結局は書店だということになり、数社受けてジュンク堂から内定を頂きました。

沖縄の郷土本に驚き。「沖縄で沖縄の本を売りたい」と異動を志願

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― どんな魅力に引き寄せられて、沖縄に来ることになったのでしょうか?

沖縄郷土本ですね。東京のジュンク堂書店池袋本店にいたとき、『沖縄県産本フェア』という企画があったんです。私は直接の担当ではなかったのですが、見たこと無い本ばかりで驚きました。字誌や市町村誌など、こんな本があるんだ!と。名前も知らなければバーコードすら無い。普段扱っている本とは全く違っていて、見ているだけで面白かったんです。

その時から、地域の本や出版社に興味が出てきました。そんな中で2009年、ジュンク堂那覇店が新規オープンすることになり、当初は担当していた人文書の選書のみを指示されたのですが、「沖縄で沖縄の本を売りたい」という思いが強くあって、異動を志願しました。

― このまちにずっと身をおいてきたからこそ感じた、まちの特徴はなんですか?

ここ周辺がひとつのまちというか、家のようなんです。そして、それぞれが狭い。なので、設備が揃っていない分、給湯器は琉球銀行に借りに行く、トイレは共同のものを使う、冷蔵庫が無いので何かを冷やすときは、隣のお店のを借りる。また、一人でやっている方が多いので、途中お店を留守にできないという事情があるので配達文化があったりと、細々(こまごま)としたやり取りがあります。

マチグヮー=『人』。物とお金を交換するだけではない役割があると思う

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買い物をしながら、ふらりと立ち寄る地元のお客さんも多い

― 今拠点としている『まちぐゎー』を形容するとどんなことばが思い浮かびますか?

市場というと『物』だと思うんですけど、やはり『人』なのではと。市場のお店って、物を売るよりは、友達が集まってきて社交場みたいになっているんです。洋服屋さんなのに、友達にお茶を出していつも飲んでいたりと。なので市場には、物をお金と交換するという役割だけではないものがあるのではと思います。

― 沖縄に来てから出会った『気になることば』はありますか?

私の本(『那覇の市場で古本屋』)にも書いたのですが、『ジンブン』(意味:【存分】から。知恵、分別、才能のこと)ということばです。沖縄タイムスも『新聞からジンブンへ』というコピーじゃないですか。割と普通に使っているように見えつつ、沖縄の人にどう浸透しているのか、なぜ『存分』が『ジンブン』なのか、そして、まちなかの思いがけない場所で目にすることもあったりするので、元書店の人文書担当として気になりますね。

― 5年後、10年後、このまちはどうあってほしいと思いますか?またそこに、どのような形で関わっていきたいと思いますか?

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ちょうど今、公設市場が仮移転という大きな節目なのですが、頭上のアーケードについて考えています。市場を解体するときに、このアーケードも撤去されるんです。雨が降った場合、私たちにとって死活問題なんですね。

 今までは自分の店のことしか考えていなかったのですが、アーケードが無くなることになってから、30年前にここで働く方々が頑張って設置してくれたおかげで、今商売が出来ているということを、初めて実感しました。今までやらせて頂いた分、今度は私たちが頑張る番なのではと思ってアーケードの再整備に取り組んでいます。

実は築地市場には図書館があるんですよ。(註:場内の図書室『銀鱗文庫』のこと。水産や市場関係の本3000冊が揃う。市場の豊洲移転に伴い、同時に移転した)それを知ったときに羨ましいなと思って、私も片鱗だけではあるんですけど、ここで同じようなことをすることが、私なりにできることなのではないかと思っています。

― 宇田さんにとっての「沖縄」が感じられるオススメ本は?

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・『入れ子の水は月に轢かれ』(オーガニックゆうき著 早川書房)
・『地域情報誌み~きゅるきゅるvol7 特集 第一牧志公設市場』(特定非営利活動法人 まちなか研究所わくわく)

この2冊です。『入れ子~』は水上店舗が舞台のミステリーで、まさにウララがある場所です。その他、周辺の通りなど、馴染みの場所や風景がたくさん出てきます。

『み~きゅるきゅる』は、「これぞ郷土本!」と言える本です。個人の体験などを記録していて、まさに市場の歴史そのもの。読むたびに発見があって、第一牧志公設市場をいろんな視点から見ることができます。

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【お店情報】
市場の古本屋ウララ

那覇市牧志3-3-1
Mail urarabooks(a)gmail.com  ※(a)を@に変えてください。
Open 10:30~17:30
定休日:火曜日、日曜日
https://urarabooks.ti-da.net