「新垣カミ菓子店」伊波元丸さん / 那覇市首里赤平町

沖縄を代表する伝統菓子といえば『ちんすこう』。琉球王朝で身分の高い人しか食べることができなかった由緒あるお菓子でした。そのちんすこうの伝統を受け継ぎ、昔ながらの製法で作り続けているのが『新垣カミ菓子店』です。今回は若旦那の伊波元丸さんに、首里のまちについて、そして、焼失した首里城についてお話を伺いました。

狭い道が残っていて、首里の風景は子どもの頃そのままですね

― 簡単なプロフィールを教えて下さい。

1975年生まれ、旧石川市（現うるま市）出身です。うちの家系は元は首里なんですが、沖縄戦の際、旧石川市の収容所にいたことと、その後も仕事の都合で旧石川市にいたため、僕も出身はうるま市なんですよ。市内の小中学校、石川高校と進んだので、しばらくは地元にいました。2000年から家業の『新垣カミ菓子店』の仕事に従事するようになり、渉外や営業、配達など色んな仕事をしています。

― 昔はどんな子どもでしたか？

スポーツが好きでしたね。剣道、野球をはじめ、高校時代はバレーボール部でした。今も体を動かすのが好きなので、若い頃はバスケ、今でもトライアスロン、マラソンなどをやっています。

― 子供の頃もたまに首里に来ていたそうですが、何か変化を感じますか？

祖母がここ（首里）にいたので、よく遊びに来ていたんですが、すぐ近くにある公園で遊んでいました。まだ、その公園も残っていたりと、全体的には今とあまり変わらないような気がします。周辺の建物は新しくなりましたが、狭い道がまだ残っていたりと、風景はそのままですね。

― なぜ跡を継ごうと思ったのでしょうか？

高校を卒業後、旧石川市の臨時職員として働いていました。でも、将来のことを考えまして、2000年頃から家業のちんすこう屋を手伝おうと思ったんです。当時はそれほど前向きでもなかったんですけど、今は使命感を持ってやってます。

王朝関係の方々が今も身近にいる首里はやっぱりすごい

― 首里というまちの特徴や感じた変化を教えて下さい。

昔ながらのものが残っていて、風情を感じますね。例えば、お店の前の道は石畳なんですが、アスファルトと違い、まちが明るくなったようで、いい雰囲気なんですよ。一方で、地元のお年寄りのお客様が減りました。昔はふらっと現れて、お茶飲みながらゆんたくだけして帰るお年寄りが多かったのですが、だいぶ少なくなりました。高齢で外出が大変なのかもしれないですね。

― 首里ってすごいなと思った点はありますか？

元々王府があったまちということもあり、周辺に尚家を始めとした、王朝関係の方々が身近にいることはすごいと思います。世が世なら王様ですよね。そんな方々がすごく気軽な感じでうちに買い物に来てくれたりするんです。

首里城の再建と同じくらい『鎖之間』をなんとかしたい。そして「歩きたくなるまち」になれば

― 2019年10月31日に首里城が火災がありました。どんな影響がありましたか？

正直、売り上げ以上に影響が大きかったのは、鎖之間を焼失したことです。うちは鎖之間でお茶とお菓子を出していました。特にお菓子は、ちんすこう以外の『花ぼうる』や『くんぺん』などの琉球菓子でした。あまり知られていないお菓子ということもあり、直接触れ合える数少ない場所として大変貴重だったんです。鎖之間が無くなったことで、伝統の琉球菓子をお披露目できなくなってしまいました。『花ぼうる』と『くんぺん』は首里で手作りしています。うちとしては、首里城の再建と同じぐらい『鎖之間』をなんとかしたいという気持ちでいっぱいです。